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成り上がるだけではBOSSにはなれない2 矢沢永吉 [ファミリー]

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<矢沢ソロ活動へ>


 新たなソロ活動を始めた矢沢が目指す方向性に大きなヒントを与えたのは、意外なことにサディスティック・ミカ・バンドでした。クリス・トーマスのプロデュースの得て「黒船」を発表し、世界に飛び出していったミカ・バンドの新しい音づくりに、当時ツアー仲間だったキャロルの矢沢は、大きな衝撃を受けたていたといいます。
 元々曲づくりには自身をもっていた矢沢は、より大人向けのロックを目指し、自らプロデュースを行いながら新しいスタイルを模索し始めます。キャロルにおいて英語と日本語を見事に融合させていたジョニー大倉に代わる存在として、矢沢は作詞を松本隆や西岡恭蔵らに依頼、詩の世界をぐっと大人向けに変えました。そのうえ、ライブにおいては、バック・バンドとして、すでに解散していたサディスティック・ミカ・バンドのメンバーたち、高中正義、後藤次利らのサディスティックスらを配するなど、新しい挑戦を続けます。
 ソロ・デビュー・アルバムは、1975年あえてアメリカでの録音を行った「I Love You OK」でした。そして、1977年には日本人のミュージシャンとしては初めて日本武道館でライブを行い、1978年にはシングル「時間よ止まれ」が大ヒット、名実ともに日本のロックにおけるナンバー1スターとなりました。

<「成りあがり」>


 しかし、彼がカリスマ的スターとして君臨するようになったのは、音楽活動によるものだけではありませんでした。それは大ベストセラーとなった彼の自伝エッセイ「成りあがり」によるところも大きかったでしょう。僕自身、「成りあがり」を読んで初めて「矢沢って、凄かったんだ!」と思った人間です。(音楽を聴いただけで凄いと思えなかった自分が恥ずかしいです)実際、あの本によって矢沢に対する社会の見方が大きく変わったことは間違いないでしょう。考えてみると今やどのアーティストも自伝的なエッセイを発表していますが、この流れを作ったのは間違いなく「成りあがり」でした。そして、この作品によって、ミュージシャン矢沢は、そのライフ・スタイル自体が最高のパフォーマンスであることを証明してみせ、こうして作られたイメージが彼をよりビッグなスターへと押し上げ、役者としての成功やあの缶コーヒーのCMの大ヒットを生み出したとも言えるでしょう。(僕もよくあの矢沢独特のしゃべり方をマネしていたものです)

<新しもの好き>

 彼は自分でも言っているように、とにかく新しもの好きで、飽きっぽいようです。しかし、だからこそ彼は誰よりも早く日本武道館でコンサートを行い、スタジアム(後楽園球場)でのコンサートをも実現させました。そして、LAでのアルバム録音を行っただけでなく、あのドゥービー・ブラザースをバックに起用したり、アルバムの全米での発売をも実現させてしまいました。(1981年の”YAZAWA”から)
 こうして、次から次へとチャレンジを続けたからこそ、矢沢は常にビッグでいられたし、その「成りあがり」根性こそが、矢沢の魅力だったのです。
 60年代から活動してきたロック・アーティストたちの多くは、もう第一線にはいません。(フォーク系のアーティストたちは未だに活躍している人が多いのですが・・・)そんな中、矢沢はひとり気をはいていると言えるでしょう。彼に匹敵するのは、CHARチャーぐらいではないでしょうか?まだまだロックがビジネスとして成り立っていなかった1970年代、彼のようにトップ・アーティストとして君臨し続けて行くためには、常に新しいことにチャレンジし続けなければならなかったのでしょう。
 そうでなければ、プロデューサーやライターとして裏方の道を選ぶか(はっぴいえんどのメンバーは、その典型)、海外にその活躍の場を見出すか(久保田麻琴、クリエイション、サディスティック・ミカ・バンドなど)歌謡曲かフォーク路線、それとも俳優として生き残るしか道はなかったのです。(沢田研二、萩原健一など、そう考えると、フォークからロックに転向して活躍し続けたカルメン・マキは凄い人だ)
 矢沢永吉の偉大さは「成りあがった」ことより、ビッグであり続けたことにあったのかもしれません。

<締めのお言葉>


「一世紀前には、マッターホルンは登頂不能とみなされていたが、今では、登山家たちは日曜の遠足として同山に登っている。・・・自分が何をしたいと欲しているのかを明確に把握すれば、人間は不死身になるかのように見える。人間の課題は、決して意志力の問題であったことはなく、想像力の問題 - すなわち、何に自分の意志を向けるべきかを知ること - であったのだ」
コリン・ウィルソン著「オカルト」より

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